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天宮ひかりは、Stella☆Luxeの初のステージのセンターにいた。

ステージの袖から眩しい光を見つめながら、18歳の天宮ひかりはそっと息を呑んだ。
マイクを握る手には、わずかな震え
――けれどそれは、不安ではなく「期待」の震えだった。

「ここが私の居場所」

幼い頃からそう信じて疑わなかった。テレビに映るアイドルたちのように、みんなを照らす太陽のような存在になりたいと。
ひかりは、幾多の困難を超えて、この場所に立っていた。

Stella☆Luxe 誕生物語(第7章 天宮ひかり:本当の太陽)

「みんなを照らす太陽になる!」

ひかりがそう宣言したのは、小さな団地のベランダから夕焼けを見上げたあの日だった。

彼女は、幼い頃に最愛の母を亡くした。仕事に追われる父に代わって、育ててくれたのは優しい祖母だった。
でも、祖母のぬくもりだけでは、埋まらないものがあった。
夜になると急に心が冷え込む。
誰にも言えない寂しさと、ぽっかり空いた母の不在。

そんな時、ひかりを救ってくれたのはテレビの中で歌い、笑うアイドルたちだった。
「どうして、こんなに笑ってるのに…こっちまで泣きそうになるんだろう」
小さな胸に灯った感情は、憧れになり、願いへと変わっていった。

「わたしも、誰かの心をあたためる太陽になる」
そう心に誓った瞬間が、ひかりのアイドル人生の始まりだった。

夢を追う道のりは、あまりにも険しかった。

中学生の頃から挑んできた数えきれないオーディション。
名前を呼ばれずに終わる審査結果。
繰り返される不合格通知。
毎晩、涙をこらえながら布団に顔をうずめた。

祖母がいつも言っていた。

「つらい時は、空を見上げなさい。星はあなたを見てるよ」

ひかりは夜空を見上げ、歯を食いしばった。
「負けたくない」と。

高校に進学してもアイドルの夢は諦めなかったが、
学業との両立は、他のライバルとの差が出ていた。
ライバルたちは芸能スクールで毎日何時間も練習していた。

「このままじゃ、どちらも中途半端になってしまう…」

焦燥と自信喪失の狭間で揺れる日々。

そんな時、ひかりはあるオーディション記事を目にする。

LUX Production 新人アイドル募集
プロデュース:春元康

春元康といえば、幾多のアイドルグループを育てた名プロデューサーだ。

ひかりは覚悟を決める。

これに全てを賭ける。駄目ならこれで最後にしよう。

それから学業以外の時間は、レッスンに全ての費やした。
決死の覚悟で、すべてを賭けてオーディションに挑んだ。

LUX Production オーディションを前にひかりは髪を黒髪から金髪に染め上げた。
全てを捧げてきたひかりは、自信がみなぎり、その瞳は、キラキラしていた。
ひかりのパフォーマンスは他を圧倒した。
オーディション会場で、明らかにいちばん目立っていたのがひかりだった。

オーディションの結果発表、ひかりはメンバーに選出された。

合格発表の翌日、選ばれた5人のメンバーが召集され、プロデューサーの春元からこう告げられる。

「リーダーは、天宮ひかりさんにお願いしたい」

春元の一言に、胸が震えた。
「私がこのグループの太陽になるんだ」
その使命に燃え、誰よりも練習に励んだ。

リーダーとしての苦悩

その日からひかりは自分のパフォーマンスを上げるために誰よりも練習し、努力を重ねた。
しかし、センターに立つひかりの輝きが、逆に全体のバランスを崩してしまっていた。

「どうして…あんなに頑張ってるのに、うまくいかないの?」

ある日、春元が静かに言った。

「君、ひとりでステージを創ろうとしてないかい? 太陽がどんなに明るくても、星があってこそ夜空は輝くんだ」

その言葉が、心の奥底を突き刺した。
自分は“チーム”ではなく、“自分自身の成功”しか見ていなかった。

ここから各メンバーと歩み寄る日々が始まった。

風間るいのダンスは圧倒的だった。

一挙手一投足に無駄がなく、完璧を追求するその姿はまさにプロのそれだった。
母親が元気な間にもう一度ステージに立つ自分の姿を見せたい。
その焦りが、周囲との温度差を生んでいった。

「もっとちゃんとやってよ」
「それで本気なの?」

冷たく刺さる言葉に、メンバーたちは息をひそめた。
空気が張り詰めていく。
グループが音を立てて崩れそうな気配を、ひかりは肌で感じていた。

レッスン後のスタジオ。
鏡の前で黙々とストレッチするるいに、ひかりは声をかけた。

「ねえ、るい。いつも、一人で全部抱えてない?」

「……別に、平気だし」

「平気じゃなくてもいいんだよ。ここは、チームなんだから」

その一言に、るいの表情が崩れた。
張り詰めた瞳の奥に、わずかな揺らぎが生まれる。

その夜、ひかりの部屋に泊まりにきたるいは、ふいに泣き出した。

「怖かったんだよ…。誰かに頼ったら、甘えだって思われる気がして…」

「わたしもそうだった。でも、頼ることは弱さじゃない。信じることだよ」

るいは「ありがとう」とつぶやきながら泣いた。
その顔は、いつものクールな仮面を脱ぎ捨てて、少女らしい柔らかさを取り戻していた。

天性のルックスを持つ朝比奈もも。
ひと目でファンを惹きつける華やかさはあったが、本人は自分の中身にずっと劣等感を抱いていた。

ある日、メイクルームの鏡の前で、ぽつりと呟く。

「ねえ、ひかりちゃん…私、ダンスも歌も、みんなの足引っ張ってるよね?」

その瞳には、涙が浮かんでいた。

「そんなことないよ。ももが頑張ってるのは知ってるから。
 一緒に練習しよ!」

それから、二人の夜の自主練が始まった。
慣れないステップに転び、何度もやり直しながら、ももは少しずつ変わっていった。

「ひかりちゃん、私、今日…間違えなかったかも!」

屈託のない笑顔。その背後には、諦めず努力し続けた強さがあった。

ひかりは知った。
自分の背中を、誰かが懸命に追いかけてくれているということを。
それが、ももとの間に確かな絆を育んでいった。

真堂さくらは、歌唱力はチーム一の実力。
大人っぽいルックス、ダンスの技術も高く、アイドルとしての資質を全て兼ね備えていた。
しかし、常にどこか一線を引いていて、グループの輪の中に完全には入ってこなかった。

ひかりは一度、自分の家にさくらを招いた。

「これ、私の推しグッズコーナー!
 ジャンプキャラだらけだけど、いいでしょ?」

予想外の一面に、さくらの目が丸くなる。

「意外…そういう趣味あるの全然知らなかった。」

「うん、誰にも言ってないけど、さくらになら見せたいって思ったから。」

その夜、布団を並べて語り合った。
ひかりは積極的に自分のことを話した。
家族のこと、アイドルへの憧れ、そして、オーディションに何度も失敗したこと。

さくらは、やがて自分のことを話しだす。

「わたし、中学の時、仲間はずれにされたの。」

友達に嘘の噂を広げられ、クラスの人気者があっという間に仲間はずれになったつらい過去。

「それから、人と関わるのが怖いの・・・。その恐怖を払拭するために、このオーディションを受けたんだけど、やっぱり怖くて・・・。」

さくらの目から、涙が溢れた。
さくらは、チラッとひかりを見ると、鼻水を垂らしながら、号泣している。

「ちょ、ひかり、なんであなたがわたしより泣いてるの!」

「だって、そんなこと全然知らなかったもん!つらかったよね!その友達ぶっ飛ばしてやりたいよ〜!」

そんなひかりを見て、さくらは、ぷっと吹き出す。

「ひかりって、真っ直ぐでほんとにいい子だよね。」

感情をなくした自分。さくらには、感情を素直に表現できるひかりが眩しかった。
もう一度信じてみたい。
真堂さくらの心に火が灯った。

星野つばさは、いつも明るかった。
場を和ませ、冗談を飛ばして、メンバーを笑顔に変えてくれる存在だった。

けれど、ひかりはふとした瞬間に見逃さなかった。
時折ふと見せる、不安な表情。

「つばさ、無理してない?」

驚いた顔で、つばさは小さくうなずいた。

「私ね、何もないんだよ。歌もダンスもすごくない。ただ明るくしてるだけで…」

ひかりはその手を握って、まっすぐに言った。

「このチームを陰で支えてるのは、つばさだよ。
 みんな不安を抱えてるけど、つばさの笑顔に救われてるの。
 もちろん、わたしもだよ。」

つばさの頬に、涙がこぼれる。

「ありがとう、わたし、親からも褒められたことなんか一度もなくて。
 わたし、人のこと笑わせるのが本当に好きなの。
 ひかりのこと、ずっと支えていくね。」

周りの4つの星は、中心の太陽に負けないくらいの光を放ち出した。
そして、チーム名はStella Luxe(ステラリュクス)に決定した。
Stellaはラテン語で星、Luxeはフランス語で、輝きという意味だった。

Stella Luxeの最初のステージ。
夜空を彩る星たちと共に、天宮ひかりは本当の太陽として、そこに立っていた。

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この記事を書いた人

【イラスト×AI×ブログによるワクワクコンテンツ提供】|ITメーカーSE歴28年|副業3年目|実績:ブログ複数運営、Twitterアフィリエイト月収益5桁|電子書籍4冊出版 、ココナラコンテンツ販売|『アフィリ王に俺はなる!』をTwitter連載中

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